現在は、消費者である個人がソーシャルメディアなどを使って情報発信をしている時代です。企業や商品、サービスなどに対して感じたことが次々と発信され消費者間で共有されています。
以前のようにマスメディアを活用した一方的な情報発信から、消費者が有益な情報を発信するという時代に変化しています。
そのため企業は、消費者から高い「信頼」を得ることが重要となっています。そこで重要になるマーケティング理論のひとつ「アドボカシー・マーケティング」です。
今回のテーマは
「アドボカシー・マーケティング。消費者との共感で売上が左右する」
です。
私は元経営者、現カウンセラーのhajimeと申します。詳しくはこちらをご覧ください⇒「はじめまして」プロフィール
約20年間の会社経営で得た経験とカウンセラーという資格を生かし、現在経営されている方々へ少しでもお役に立てればと思い、オンラインカウンセリングルームを運営しながらブログを書いています。
今回の記事が経営者の皆様のお役に立てたら幸いです。
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マーケティングの激変で注目される「アドボカシー・マーケティング」とは?

経営者の方であればご存知の方も多いかもしれませんが、
「アドボカシー・マーケティング(advocacy marketing)」とは…
「アドボカシー(advocacy)」=「支援」「擁護」「代弁」という意味。
顧客の意向を最優先して信頼関係を築き、顧客第一主義で執り行うマーケティング手法です。
ネットやSNSの普及で、マスメディアに取って代わったソーシャルメディアの発展により、消費者である顧客が容易に多くの情報を取得できるようになりました。
テレビ、新聞、雑誌、ラジオなど、企業側の一方的なマスメディアの広告よりも、実際に利用した顧客の情報を有益と感じる消費者が増えています。
購入前にGoogleで検索すれば全ての商品情報だけでなく、口コミなどからリアルな感想も容易に得られ、自宅に居ながらにして比較検討、そして購入ができます。
この利用者の口コミやレビューなどが、次の利用者にとって重要な判断材料になるため、企業側も徹底した顧客第一主義を追求し、顧客との信頼関係を構築する必要が出ています。
これは言い換えれば「カスタマーパワー」が高まったと言えます。
これまでの小手先だけの素敵なキャッチコピーだけではモノは売れず、企業側に隠し事がない正直な商売をすることが求められています。
そこで有効となるのが、「アドボカシー・マーケティング」という手法です。
「お客様は神様」とは異なる、「顧客第一主義」が重要

「お客様は神様」という言葉はもはや消え去ろうとしていますが、「顧客第一主義」という考えはこれとは異なります。
企業側が顧客に対してありのまま全ての情報を提供し、顧客が最高の利益を得られるような商品やサービスを提供することです。一時的に不利益になっても、顧客が望むものが自社にはなく他社にあれば、他社製品を紹介することまで行われています。
以前、地域の商店街の店主には「損して得する」という考え方がありました。
たとえば、
八百屋・・・「このミカン、ちょっと傷んでるから半額でいいよ」
肉 屋・・・「ちょっと多めに入れておいたよ」
魚 屋・・・「明日の午前中だと新鮮なサンマが届いているから明日おいで」
など、一時的には不利益でも、正直に物事を伝えることで顧客から高い信頼を得て、顧客がご近所へ口コミし、結果お店は繁盛するというものです。
現代はSNSなどを活用するという部分が異なるだけで、正直で真摯な対応が求められるという点では「原点回帰」とも言えます。
このような徹底した顧客第一主義により、顧客は高い満足を得てリピーターになるだけではなく、ここで得た情報をソーシャルメディアを通して情報発信するという点が現代の最大の特徴です。
つまり、当社の営業マンや従来のマス広告に代わって、顧客が次の見込み客へアプローチしてくれているということになります。
これらをリファーラル営業と言います。
◇リファーラル営業については、こちらの記事「SNSを活用した営業戦略で収益を改善させる思考」をご覧ください。
アドボカシー・マーケティング実現のための5つの診断

では「アドボカシー・マーケティング」を実践するために、あなたの会社にそのポテンシャルがあるか5つの診断をしてみましょう。
1.「品質」
自社が提供する商品やサービスの品質は、顧客に対して自信を持って推奨できるものでしょうか。
2.「誠実性」
顧客に対し全ての情報を誠実に提供し、会社として透明性がありますか。
3.「顧客との絆」
顧客との間に強い協調性があり、共に商品やサービスを共同開発できるだけの絆が作られているか。
4.「インセンティブ」
自社の従業員が、「顧客に対してアドボカシー(支援)する」という高いインセンティブ(動機)があるか。
5.「環境」
社内の部署、取り巻くビジネスパートナー(取引先)なども含めアドボカシー(支援)するという環境が整っているか。
これら5つに対し、経営者が不足する部分があると思えば、整備してからアドボカシー・マーケティングに取り組むと良いでしょう。

すぐに取り組むべき5つの課題

では最後に、アドボカシー・マーケティングを実践するために取り組むべき課題を5つご紹介します。
1.顧客を支援する
顧客の消費活動を支援するという姿勢が、アドボカシー・マーケティングの基本となります。また、企業姿勢として更に重要なことが「透明性」や「誠実性」です。
2.顧客満足のための投資
顧客に最大の満足を提供するため、自社の商品やサービスが競合他社に打ち勝つための開発投資が必要です。そして誠実な商品開発が何より重要になってきます。
3.顧客と共に価値を追及
そもそも商品やサービスにおいて価値がなければ売れません。後に顧客からの批判を受けるのであれば、開発時点において顧客からの意見を聴取できる関係性を築きましょう。
4.実行力
顧客と交わした約束は確実に実行する必要があります。確実に実行することで信頼を獲得でき、顧客から”優良企業”という評価を得られます。
5.ロイヤリティ構築
顧客へ提供した高い満足度は、高いロイヤリティ(愛着度・信頼度)へと繋がります。この高いロイヤリティが、顧客発信へと広がります。
◇高いロイヤリティ顧客に対する効果的なマーケティング戦略については、こちらの記事「アップセルとクロスセルで客単価を上げる方法」をご覧ください。
以上のように、「アドボカシー・マーケティング」には、カスタマーパワーが大きく関わっています。ソーシャルメディアで発信される顧客の力は決して恐れるものでありません。透明性や誠実性を持って臨んでいれば、むしろ自社の強みへと変化してきます。
今回のアドボカシー・マーケティングの理論をきっかけに、自社の企業レベルの向上に繋がれば幸いです。
今回のテーマに沿った
\おすすめの本/
をご紹介させて頂きます
グレン・アーバン (著), スカイライトコンサルティング (監修), 山岡 隆志 (翻訳)
アドボカシー・マーケティング
~顧客主導の時代に信頼される企業~
企業と顧客の力関係は、インターネットの登場によって完全に逆転しました。
それが今日のビジネス環境変化の本質です。誇大広告、キャンペーン、ポイント・プログラム、…こうした従来のマーケティングは、もはや破綻しています。それどころか、逆効果を生みさえしているでしょう。
現代の消費者は気まぐれ。一度は目を向けても、他に良いものがあればすぐに去っていく。
押し付けがましいプロモーションには嫌悪や反感を抱き、企業の評判も悪評も即座に広めて、企業の命運に強い影響を与えます。
そこで提唱され始めた新たなコンセプトが「アドボカシー(支援)」です。
たとえ一時的には自社の利益に反することでも、顧客にとっての最善を徹底的に追求することで、長期的な信頼を得ようとする考え方。
一見、常識に反するような試みを、事実、幾つもの企業が導入し始めています。まさにマーケティングのパラダイムが大きく変化しつつあります。
「信頼」を基礎とする「アドボカシー・マーケティング」。そのコンセプトは、日本の企業文化に取り入れ、競争優位の構築につなげていけるものに違いありません。マーケティング関係者や経営者はもちろん、企業活動に関わるすべての人にとって必読の一冊。
【著者】グレン・アーバン(Glen Urban)
マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院マーケティング教授、エクスぺリオン・システムズ共同創設者兼会長。
収入予測のシミュレーション・システム「情報加速化(InformationAcceleration)」手法を開発した。3,000件にのぼる新消費者製品開発の成功と収益性予測に活用されたこのツールは、メーカーの開発費の大幅な削減に貢献している。
また、”Digital Marketing Strategy”、”Design and Marketing of New Products”、”Advanced Marketing Strategy”(Prentice Hall)をはじめ6冊の共著がある。

アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 (ウォートン経営戦略シリーズ)
出版社 | 発売日 | 単行本 |
英治出版 | 2006年11月14日 | 272ページ |
古くて新しい概念
顧客主導という概念は決して新しくない。ただ、ネット社会におけるレピュテーション、プロダクトアウトからマーケットインという潮流を踏まえるとあらためて斬新的なアイデアであることに気がつく。商品の価値は製品やサービス自体から顧客提供価値へとシフトしてきている。この顧客提供価値をわかりやすく訴求するには、その価値を実感した顧客自身を起点にしてマーケティング活動を展開するべきではないか。
Amazonレビュー
昨今のIoTやデジタルソリューションビジネスにおいて顧客のユースケースがソリューションの素として注目される所以でもある。
目から鱗が落ちました
最近出版される日本人が書いたマーケティング本は、コトラーの焼き直しのような内容のものが多くうんざりしていましたが、久しぶりに革新的な本に出会えたとワクワクしました。今の時代に沿った新しいマーケティング理論を非常に体系的にまとめられていて、実際の事例も数多く紹介されていおり、実践書としても使えます。さすが数々のマーケティングの賞を受賞されている、トップビジネススクールの教授だと感銘しました。
Amazonレビュー
顧客の力をいかす
・マーケティング勉強中の私には書名の意味さえわからない本でしたが、大変勉強になった。書名とおりの内容であった。
Amazonレビュー
・カスタマーパワーをいかす視点と留意点が端的に整理されている。その通りやって成功するかはわからないが。
・マーケティングはどの本もそうだが、BtoBに関しては殆ど触れていない。A理論はネットワークなど活用し、バリューチェーンを広げて考えていけば、BtoBでも活用できるかもしれないと感じた。
まとめ
今回は、「アドボカシー・マーケティング。消費者との共感で売上が左右する」というテーマでお話しさせて頂きました。
・マスメディアからソーシャルメディアへ激変したことで、カスタマーパワーが強まった
・「原点回帰」正直で真摯な対応が現代の企業には求められている
・アドボカシー・マーケティング実現のための5つの診断
・すぐに取り組むべき5つの課題
結論:アドボカシー・マーケティングの実践により、顧客との強い絆が生まれ、長期的に持続可能な “高ブランド企業” が作られる。
今回の記事が経営者の皆様のお役に立てたら幸いです。

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